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2023-06-30インボイス 



消費税のインボイス制度の施行が2023年10月に迫っている。しかし、法人のインボイス登録率が90%を超えているのに対し、個人事業主・フリーランスのインボイス登録は進んでいない。その背景として、とりわけ従来の「免税事業者」の不利益が大きいなどの様々な問題が指摘されている。では、課税事業者の側はどうか。インボイス対応にあたる経理担当者への取材もふまえ、見えてきた深刻な状況をレポートする。
前提|消費税のしくみとは
まず、消費税のインボイス制度がどのようなものか、何が問題とされているかについて触れておこう。そのためには、前提として、消費税のしくみを理解しておかなければならない。
◆消費税のしくみ
消費税は、「事業者」が納税義務を負う税金である。事業者は、商品・サービスの価格の10%または8%(軽減税率)の額について納税する義務を負っている。
事業者は、商品・サービスの価格に消費税相当額を価格に転嫁することが認められている。
誤解されやすいのだが、商品・サービスの価格への消費税相当額の転嫁は法的義務ではない。消費税相当額を価格に転嫁するかどうかは、事業者が自己責任によって「判断させられている」にすぎない。
「消費税」とはいいながら、いわゆる一般の「消費者」は納税義務を負っていない。一般消費者はただ、価格転嫁されている場合に、実質的に、消費税相当額を負担しているにすぎない。
消費税は「間接税」といわれる。間接税とは、「納税義務者」と「税の負担者」が異なる税金を意味する。しかし、上述したしくみからすると、完全な間接税とはいい切れない(「一部直接税、一部間接税」とでもいうべきか)。
このことが、消費税の理解をわかりにくくしているうえ、今回のインボイス制度の問題点に繋がっているといえる。
◆消費税の計算方法
次に、事業者が消費税を納税する際に、消費税の額を計算する方法として、「仕入税額控除」と「簡易課税制度」の2種類がある。
このうち「仕入税額控除」が原則的な計算方法であり、「商品・サービスを販売した際に受け取った消費税相当額(売上税額)」から、「仕入れの際に支払った消費税相当額(仕入税額)」を控除して算出する。あたかも、事業者が所得税・法人税の計算をする際に、「売上」から「経費」を差し引くのと似ている。
あらかじめ述べておくと、インボイス制度はこの「仕入税額控除」にかかわる制度である。
もう一つの「簡易課税制度」は、売上高が5,000万円以下の事業者について認められている方法であり、売上税額の一定割合の額を納税すればよいというものである。なお、納税額の割合は業種ごとに異なる。
インボイス制度とその問題点
以上を前提として、インボイス制度とその問題点について解説を加える。
◆インボイス制度とは
インボイス制度は正確には「適格請求書等保存方式」といい、上述した「仕入税額控除」の計算において問題となる。
仕入れのときに支払った消費税の額を証明するために、取引先からインボイスの発行を受けなければならないのである。
このインボイスを発行できるのは「課税事業者」に限られる。年間売上1,000万円以下の「免税事業者」は発行することができない。
◆インボイス制度により生じる免税事業者の不利益
これによって、従来の「免税事業者」に著しい不利益をもたらすことになる。
すなわち、免税事業者はインボイスを発行できない。いきおい、免税事業者の取引相手方はインボイスを受け取れないため、消費税の計算をする際に「仕入税額控除」を行うことができない。
そうなると、免税事業者の相手方で「仕入税額控除」を行う事業者は、仕入税額控除をせず売上税額をそのまま納税しなければならないことになる。
それを避けるには、以下のいずれかを選ぶしかない。
【課税事業者側が従来通り「仕入税額控除」を行うために必要な対応】
・免税事業者との取引をやめる(課税事業者との取引に切り替える)
・免税事業者に対して「消費税相当額」の値引きを求める
なお、後者については法令上禁止されているが、免税事業者の側が任意に応じることは禁じられていない。力関係を考慮すると、免税事業者が事実上、「任意」と称して不利な条件を飲まざるをえない可能性も否定できないのだ。
いずれにしても、免税事業者にとっては著しい不利益となる。
◆免税事業者が課税事業者に転換する場合の問題点
また、もしも、免税事業者がインボイスを発行できるようになるために「課税事業者」に転換すれば、一気に、以下の新たな3つの負担がのしかかることになる。
【免税事業者が課税事業者に転換する場合の新たな3つの負担】
・消費税の納税義務を負う
・消費税の計算の手間・コストが発生する
・インボイス発行の手間・コストがかかる
これが、中小零細の個人事業主・フリーランスに対する「弱いものいじめ」の制度であると指摘されるゆえんである。
◆「免税事業者の益税」という誤解
なお、これに対し、「益税」という表現を用いて反論が行われることがある。
「免税事業者は今まで、国に納めるべき消費税相当額を懐に入れる『益税』を行っていた」というものである。
しかし、上述した消費税のしくみを前提とする限り、この言説には誤解が含まれているといわざるを得ない。
どういうことかというと、依頼主との力関係の差が大きい状況で、しかも、自身が免税事業者であることを知っている依頼主に対し「価格に消費税分を上乗せしてください」ということは事実上、不可能に近い。
また、消費税法に「免税事業者」の制度がおかれている以上、免税事業者が事実上、消費税分を価格転嫁しないことは、むしろ自然である。価格を抑えるための正当な経営判断であるとさえいえる。
以上はあくまで価格決定過程の実質に着目したものである。もちろん、形式的には「本体価格+消費税」の形で表示されているかもしれない。しかし、それは課税事業者側の経理上の便宜のためという側面が大きい。
免税事業者の「益税」の実態は疑わしいといわざるをえないのである。
進まない課税事業者側のインボイス対応
以上、解説してきた問題点は、主に免税事業者の不利益に着目したものである。しかし、インボイス制度の影響を受けるのは、当然ながら、課税事業者側も同様である。